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1年生ものづくりの最初に話す話の内容から(安全に関わって)2011. 6.26

○安全第一
 今日から、「技術とものづくり」の授業がスタートするわけですが、一番大事なことは「安全にケガなく」授業を終えることです。技術・家庭科が小学校で行われなかった理由の一つに、「小学校では危険で授業をさせられれなかった」と言うことがあります。
 いくら授業をやって「たくさん学んで、考える力が伸びたねぇ」と言っても、「そのかわりに指が一本なくなってしまった」ではいけません。他の教科ではほとんどの場合、間違えることを恐れてはいけないし、間違えることで覚えていくのですが、技術・家庭科ではそれが適用できない場合があるのです。

○なぜ技術・家庭科が危ないか。
 他教科でも、間違いがケガにつながる場面はあります。理科の実験や体育などがそうです。ただ、プールや薬品などの事故をのぞけば、たとえば体育での骨折やねんざなども、自分の力の範囲ですよね。決して100km/hまで加速して転んでしまうと言うことはない。でも、技術・家庭科は楽をするために機械を使うから危ないんです。

○機械の定義
 機械ってどういうものを言うと思いますか?この両刃のこぎりは道具ですよね。車や電動のこぎり?モーターやエンジンを使うもの?じゃあ自転車は? 自転車も機械なんですね。機械とは、「力の大きさや方向を変えて、仕事をするもの」です。自転車は足の往復運動を回転運動に変えて仕事をしますよね。また、変速機などもついています。

○技術の進歩と安全
 技術は必要があるときに進化します。歩いていては遅いし,たくさんの荷物を運べないから牛車、自転車、そして車へと変化してきました。でもその代わり、悲惨な事故が起きますよね。交通事故死を減らすのは簡単なことで、明日から車を禁止にすればいいんです。でも、そんなことはできませんよね。人間は一度楽な暮らしを始めてしまうと、なかなか元へは戻れないものなんです。だから、楽をしつつ、いかに安全に利用していくかと言うことが大切になります。

○のこぎりを例に
 昔々の人が、~おそらく着物なんかもない時代の人が~家を建てようと考えたとき、どうやって木を切ると思いますか?最初はボキッと力で折るか、石器を使って切ったことでしょう。その後、鉄が導入されて、このような小刀ができた。でもこれできるには時間がかかる。そこで考えたのは、刃を並べること。のこぎりの誕生ですね。そして今では、円盤状に並べた丸鋸が一般的になり、大工さんもほとんどこれを使っています。そしてレーザーカッターや水でカットする技術も出てきている。まあコストの関係から大工さんは使っていないと思いますが・・・
○もう少し科学的に
 今の話を、もう少し科学的に考えてみます。まず最初の小刀ですが、これで切断するとこんな感じに、だいたい1秒で1つの刃を通すことができるでしょうか。これじゃあ切るのに日が暮れちゃいますが、ケガをした時を考えると、間違えて指を切っているのに「痛い痛い」と言いながら何度も切るやつはいないわけです。
 次に、のこぎりの場合ですが、こののこぎりはこの間数えたら刃が145刃並んでいました。上手な人が切れば、こんな感じでたくさんの刃を使って切ることができるので、まあ100刃/秒くらいはいけるでしょう。この場合のケガは、ひいている途中で止めるのは無理なので、ぐいっと引いちゃうと100回位切ることになっちゃいます。
 そして丸鋸です。こんな感じにさくっと切れるし、機械ですからばっちり90°に切断できます。便利ですよね。さて、どれくらい刃を通していると思いますか?丸鋸の刃は1枚の円盤に100刃位ついていました。これが何回回っているかというと、約6000回転/分(r.p.m)です。じゃあ一秒間には?そうです。100回転ですね。結構速いでしょう。ということは、1秒間指を当てちゃうと・・・・10000回切られちゃうんです。これは指なんか簡単に落ちちゃいます。怖いですよね。じゃあ、使わなければいいと思うんですが、さっきの車と同じで一度使っちゃうとこの便利さはやめられません。大工さんだって時間あたり100倍違うんですから使わざるを得ません。大工さんの仕事が切ることだけだったと仮定したら、100日かかる仕事が1日で済んじゃうんですから。
○気をつけて使っていこう
 これが技術です。便利さのウラに危険性があったり、環境破壊があったりする。私たちはそのバランスを考えながら、どう技術とつきあっていくか。これも技術・家庭科の授業で学んでほしいことの一つです。